胎盤/ホロウ・シカエルボク
 

女は次第にその夢が持つ圧力に翻弄されるようになった
子を宿しているというのに
身体は激しく痩せて
出始めた腹以外は、まるで
枯木のような有様だった
六月(むつき)を過ぎるころには
女は歩けなくなり
布団に寝たきりとなった
彼女を世話する女たちは自分たちが最も信頼する医者に
出来るだけつきっきりで彼女を診てくれるよう頼んだ
とはいえ薬を与えるわけにはいかないので
医者は彼女が口にするべき栄養を点滴や注射で与えた
自分の身体にぷつりと穴が開く音が聞こえるたび
女は何かを思い出すような目をしてぶるっと短くふるえた


間もなく生まれるという頃
紫色の唇の女はもう目を
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