胎盤/ホロウ・シカエルボク
るようになる
暗闇の中で音がしている
ちょうど女が生まれたときのように
暗闇の中で
誰かが版画に色を馴染ませている
しゅ、しゅ、とバレンの音が
滑らかにこだましていた
あの絵はなんだろう、と女は考えた
その時女は少女に戻っていたが
腹はぽってりと膨らんでいた
ああ
まるで子供を撫でるようだ
色を馴染ませるというのは
まるで子供を愛でるようにするのだと女は考えた
不意に、バレンをもつ者の手が止まり
くるりと女の方を向く
そこにはとても恐ろしい顔がある予感がするのだが
その顔がすっかりこちらを向く前に必ず女は目覚めてしまう
身体にはびっしょりと汗をかいて
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