胎盤/ホロウ・シカエルボク
なが彼女を病院に連れていった話をすると
合点がいかぬ、という具合に首をかしげながら帰って行った
事実、彼女はそのあたりの誰よりも健康で
病気と呼べるようなものはなにひとつしたことがなかった
少女には依然名前がなかった
彼女は彼らが与える名前を決して認めず
静かな調子でただただ自分の右腕を指さすばかりであったから
みんなはそれならそれで仕方がないかという気になって
うなずきや手ぶりなどで彼女のことを呼んだ
気の利いたものは右腕を指さして呼んだ
彼女は呼ばれればちゃんとそこに行って
いろいろなことの手伝いをしたので
そのうちみんなは名前のことなどどうでもいいのだと思うよ
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