電車ごっこ/吉田ぐんじょう
のボールペンで
精一杯ていねいな文字で
だけど
書きたいこととは違う方向へ
どんどん逸れていってしまう
おわかれの手紙を書いているのに
気づくとカモノハシの生態について
便箋を埋め尽くす勢いで書いてしまっていたので
諦めてペンを置いた
カモノハシは眼をつぶって水中を泳ぐ
だけどいまそんなことはどうだっていいのだ
あんまり明るすぎるせいなんだろうか
窓の外を見てみると
通りすぎてゆく人々はよそよそしく
すこし透き通って
さんさんと陽が射していた
口に含んだアメリカンコーヒーだけ
雨の味がして親しくて
遠くのホームの発車ベルが聞こえる
(あ、遅れてしま
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