耳カスが溜まってたんですって/木左右未
ったが
伝えるための言葉が失われていたため、彼の研究結果を誰にも報告することができなかった
いや、正確に言うと、彼は言葉を失ったわけではなく
彼の理解できる人間が世界が失ったのだが
世界は代わりに人の数だけの言葉を手に入れてしまった
その瞬間を、ある貧しいが広い土地を持つ国の農夫の男がこう思い出す
「あの日、雷が世界中の人々の頭の上にたくさんたくさん降ってきたんだ」
誰もがこの世に自分の言葉を理解するものがいなくなったことを、誰もが直感で知っていた
なので誰も自分の言葉が通じる相手を探しに旅に出ようとはしなかった
たまに旅に出ようとする者もいた
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