8月4日/過呼吸に見舞われない為に/遊佐
 

そっと摘まんで引っ張ってみれば
ずっと遠くに浮かんだ逃げ水の中から
真っ黒に日焼けした坊主頭の僕が
自転車に乗りやって来る

風をきり、風を裂き、風を纏って弾けるように
唄なんか歌いながら
嬉しそうに
楽しそうに
まるで世界の真ん中を行くように
笑っている
笑っていた…
日溜まりと日陰の境が在るように
其処に君は居ない
去年の夏には確かに居た君、笑わない僕の隣りで、いつも笑っていた君
今も笑っているのだろうか


七月は
まだ終わったばかりで、
其処に君が居たことも沢山の埃達と一緒に
くるくると
ぐるぐると
まだ至るところに漂っている
まだ馴染めない八月の匂いに軽くむせながら僕は、
夏を吸い込
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