帰京前夜/北村 守通
黒板用の巨大なコンパスや三角定規は埃を被っていた
世界は収縮し
空間が押し迫ってきていた
分子間引力を感じられるほどに
宇宙は収縮していたのだ
もうすぐ
東京に帰るはずだ
新宿のションベン臭さが漂ってくる
ネズミの肉を使っていると噂されるほどに
脂ぎって獣臭かったジャンボメンチの臭いが
口の中に広がる
統一感のない畑の風景が車窓から拡がる
街角で売られていた
オロナミンCの瓶に入った謎の物質は
今も頑張っているんだろうか
引き込んだものの
財布を手にとって確認した後に
深いため息と共に
今後街をぶらつく際の注意
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