帰京前夜/北村 守通
 
た。

ボクの正面にまだ黒板があったころ
同じ教室で同じ黒板を上目遣いにながめていたころ
目の前に広がっていたのは果てしない緑の平原で
様々な世界から勧誘がかかっていたが
その甘いささやきの美味しい部分だけが全てだと思っていた。
生徒達の居ない間に
隠れてこっそり座席に座ってみると
輪郭のない先生達の講義が始るのだが
集中して聴けないでいる。
自分の座席の位置も忘れてしまったが
ノートをとらなくてはならない、ということだけは
習慣的に覚えているようで
荷物がないにもかかわらず
鉛筆を持っていないにもかかわらず
手の位置が小さな机の上にあ
[次のページ]
戻る   Point(7)