風に吹かれて/ホロウ・シカエルボク
毒々しいその塊は少しも挫けることはなかった。
おかしな話だが、自分が昔住んでいた家のことを思い出した、越した後に一度だけ訪ねて行って、無人だった家屋に潜り込んで数時間遊んでいたことがあったのだ、小学生のころだったか…あれは不思議な体験だった、家族があり、家具が置いてあったそのころより、全てが行ってしまったその家の方が、どこか親密な匂いがした、面倒な虚飾なしに語り合う言葉のような親密さが、一階、両親が住んでいた居間、廊下、台所、階段、二階の部屋…あの時初めてその家に触れた気がした、その時初めてその家と深く通じあった気がしたのだ、潜り込んでよかったと思った、俺は間違いなくあの数時間、あの家の中で
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