はちがつがこわい/木屋 亞万
 
サイル
ミサイルは白い、八月の
入道がスーツを着込んだようにでかい

キャノンボールがあてもなく飛ぶ
練習をしているのだ
テニスのサーブをキャノンボールと呼んだ七月
八月のボールはキャノン砲が放つのでラケットでは打ち返せない
ラリーのないつまらない試合を作るために
八月は練習ばかりしている

八月が恐い
八月の前日に見た夢、
雲海の上をミサイルが飛んでいた
大きくて白い、ペットボトルロケットのようだった
空の高いところは風が強く、ロケットの皮はめくれ始めた
ティッシュペーパーのような表皮がはらはらと何枚も雲の上に落ちていく
そのティッシュが雲に触れるとみるみる入道
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