首都/たもつ
忘れ物のような話をしました
ただ長いだけのベンチがあり
終わりの無い話を続けました
読みかけの本が無造作にふせられ
背表紙は少し傷みかけていました
マリエはすぐに人を殺そうとする
けれどマリエはもういないので
誰も殺されることなく
話だけが続きました
話の途中何度かの言い間違いがあり
そのいくつかは訂正され
残りはそのままでした
心臓に一番近い駅を知っている
マリエは言いました
小さな駅なの
小さな駅前に
古い本屋さんと中華料理屋さんがあるの
そこに心臓があるの
マリエは浴衣が良く似合い
嘘をつきませんでした
これから見に行こうか、とマリエは言いました
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