ファミリア/吉田ぐんじょう
 
したって生姜醤油は
母の味に近づきすらしない


雨の降るうすぐらい昼さがり
こわいものが入ってこないように
窓もドアもすべて施錠して
安心して横たわり目を閉じる
もう誰も守ってくれる人はいないから
この身はじぶんで守らねばならないんだ

だけど
こわいものはいつだって
どこからだってやってくる

血の沢山出てくる悪夢を見て
あ、おかあさん おとうさん たすけて
と言って目覚めた
午後七時の闇が
親しげに部屋全体を覆っている
しいんとした台所には
炊飯器が静かに湯気をあげているだけで
誰もいない
そうだ
わたしから捨てたんだ


お中元を実
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