ファミリア/吉田ぐんじょう
を実家へ持っていくのがこわい
例外なく老いた
母と兄と父と祖母の待っている家を
夫と二人で訪ねてゆくのがこわい
お中元を持って行って帰ったあと
わたしのいない家で
みんながどれどれとか言いながら
まるで宝物を触るみたいにそうっと
わたしの持って行ったキャノーラ油三点セットとか
永谷園お茶漬けセットとかを
あけるかもしれない
と想像するのがこわい
二つ折りの携帯電話を開けたり閉じたりしながら
わたしの細胞にまで深くしみ込んでいる
市外局番からの電話番号を
押そうとして
でもやっぱり押さない
子供のままの甲高い声で
わたしや兄や妹が出たらどうしよう
と思ってしまうのだ
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