輪廻/コノハナ
 
存在していた。

初夏の緑と木洩れ陽にりんと姿を浮き立たす、黒衣と射干玉の夜の如くの美しい髪と目を持つ少女。

少年の視線に少女は笑む。

「お見えになりますか?」

少女には確かな肉体がない。
纏う香りは異世のそれと、深い花の哀弔。

頷く少年。

嬉しそうに微笑む少女は、人間のものではない幻影。

目眩のような感覚。
狂わしいまでの自己喪失。
それは人のいるべき場所ではない現実。

「君の名は……?」

問いに少女はふわりと身体を向き直す。
首を少し傾ける、無垢な仕草が甘い菓子のよう。

「あなたのお好きに」

少年を正面から見、鈴音のような
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