輪廻/コノハナ
 
ともない。

いつもなら。

なぜか今日は目の前の空間が気になって仕方がない。
だが、ここは生きた人の在る場所ではない。
何が起こるかわからないのだ。
むやみに深く入り込み、現世への道を見失えば、それは死を意味する。
人食いの妖もいる。

わかっていた。

だが少年はそこに惹かれ鳥居をくぐる。
不思議な感覚だ。
恐怖も疑心もない。
ただ今日、自分はここに来るために歩いたのだという根拠のない確信のようなものだけがある。

この石畳の先に自分の出口がある。

視界が開け、古い小さな社が見えた。そして、社の側に立つひときわ大きく注連縄を巻かれた神木の下に、少女は存在
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