「B-29は頭上を通り過ぎていきました。」〜祖母の記憶/夏嶋 真子
 

草むらの奥へ姉の姿は消え、空から見ればまるで「的」のように
打ってくださいといわんばかりの私が取り残されました。
裏切られた、とは思いませんでした。
私を背負って逃げれば、2人とも助からないでしょう。
それでも姉に見放されたことは悲しくて悲しくて、
その悲しみは、不条理なものへの怒りにかわっていきました。


(もうどうにもできない。
 私はここで死ぬんだね。
 
 なんのために。
 
 なんのために私は死ぬの。

 
 そう思いながら今までたくさんの人が死んだんでしょうね。
 
 悔しかったでしょうね。
 寂しかったでしょうね。
 恐ろしかったでしょ
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