井の中の蛙 未練を知る/nonya
井の中の蛙を掌にのせて
珍しそうに眺めながら
「大丈夫だよ」と彼女は
うわのそらでつぶやいた
程好いぬくもりにとろけて
居眠りしていた蛙は
「大丈夫だよ」という言葉を
うっかり「好きでいるよ」と誤訳した
井の中の蛙が珍しくなくなって
何かの匂いを嗅ぎつけた
彼女の無限大の好奇心は
あっさりと蛙を川に放った
さすがに驚いた蛙は
その時やっと「大丈夫だよ」が
「我慢できるよ」だったことに
気がついた
川に落とされても
残念ながら蛙は泳げてしまう
いつまでも甘ったれて
溺れたふりもしていられない
このまま流されていけば
大海に辿り着くことは知
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