顎なし鱒夫と俺物語/e.mei
 
はお年玉お年玉と繰り返す。教会の帰り道に餅を購入するサザエ。イエス、キリスト。鳩は飛び上がり、死は侵される。俺の乾いた血を川に流し、地獄から逃れようとするのは無駄な行為だと知りながらも俺は静かに流れ、風は乱暴に吹きつけてくる。沈んでいく陽、教会からは遠く離れ、年賀状を書かなくちゃとサザエが呟いた。
 落ちてくる死が雪のように見えてきて、知らない家の窓辺からは犬が顔を出している。永遠の読み方も知らないで、沈む陽に導かれた精霊は稲妻を召喚した。ああ、神よ何故ですか、夕陽に照らされる稲妻の頭。真冬の嵐か、それは地獄への炎、約束されていた奇遇。地獄への道はまだ遠い。
 夜が降りてくる、冬の闇は疲れたよ
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