顎なし鱒夫と俺物語/e.mei
(駄目よ。ほら、御覧なさい。あすこ、最後の光のあすこを)――ああ、かあさん、かあさん! ようやく稲妻の部屋の明かりが消えたよ。さあ、行こう。サブ専用の裏口から声高らかに、俺はサンタ!
「メリークリスマ――」
ガチャガチャ。
「………………」
『戸締まりはしっかりと』
俺の頭で、その台詞が繰り返し、繰り返し響いていた。
ああ、「鱒夫の溜息」
妻が教会に通いはじめた。
賛美歌のあと、晴れた空に、「神よ!」と叫ぶ。それを見た俺が笑うとサザエは腕を振り上げ俺の頭を殴った(俺は永遠を探し、果てのない道を歩く)ワカメはお正月お正月と繰り返し、カツオはお
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