顎なし鱒夫と俺物語/e.mei
 
らしい顔をして黄色い髪した女を口説いている。無駄だ、無駄だ。無駄だろう! 影の宿舎は死の道を離れない。生きる事さえ忘れさせるエラ呼吸、翼は音も無く消えていく。流れ落ちる雫。光る巨大な目から見下ろされる俺は女から離れ電話を取り、あいつに電話をかける。
「会議で遅くなる」と俺が告げるとやつは、「毎日毎日会議お疲れさまですねえ」と呆れ声で電話を切った。ああ、本当に疲れているさ。「鱒夫君! 延長だ!」稲妻が叫ぶ。陽気な声だ。俺は婿養子、嫁の名はボンバイエ、おまえの嫁はクロフネ。地獄から抜け出せず、ああ、おまえは俺の気も知らずに、俺の気も知らずに……


 そして、「鱒夫の消失」


 メリー
[次のページ]
戻る   Point(9)