賞味期限(改)/伏樹
 
ない


 ここの部屋が誰のものかなんて知らなかったし
 豆電球すら灯されないから私も男も輪郭が溶け出していた
 ただそれは偶然ではなくいつもで

 「   」

 花の名前、男にとっての最低限の私を耳元で小さく囁くと、季節ハズレだよと笑われる。
 大概いつもこうやって誤解されるけど、その方が良かった。
 旬の花じゃ、あからさますぎるからとまるで照れたような口調で返した。


口をつけたココアを放っておいたら、一日で何か黒い固形物が浮かんでいたけど、
ラベルは「腐ったホットココア」にはならないのが当たり前。
まだ君の見かけは私が好きなココアのまま
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