賞味期限(改)/伏樹
昔、好きだった誰かがそう望んだ先に
今の私があって
そう、そのまま生き続けただけ
「もしもし、もう時は変わっていますよ」
人通りの多い道に置かれた自販機で、その言葉は買えた
同じような味が温かさと名前だけを変えて
私の方へと急いで駈けてくる
「当たり」という非日常を望んで自販機の前で立ち尽くし、
28℃の快晴の下、一本のままのホットココアを飲む。
ホットココアは、ラベルに「Hot Cocoa」と書かれていなくても
触れれば熱いし、飲めばココアだから、本当は名を名乗る必要はないのだろう
だけど私は、触れられても舐められてもきっと何も分からない
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)