旅立ち、と未熟が吹かしたがる/ホロウ・シカエルボク
来なかった、癇癪のような夕立の中、濡れずに居たのだから
駅に次の列車が滑り込む、まるで新しい世界がそこに開けるみたいに儀式的に、俺は信じなかった、時刻で区切られてゆく定期稼働の誕生など、駅を歌おうとする詩人など乗車券とともに轢死してしまえばいい
ほどなく雨は上がる、諦めて、濡れたやつらが空を見上げて一息つく、段階を飛ばすように太陽が光度を上げていく、濡れた身体はすぐに乾くものだ、日向に立つことの喜びを彼らは知るだろう、それは再生だろうか、あるいは治癒だろうか、傘の下に立つ俺はその意味を知ることが出来ない
滑り込んだ列車がまた鳴声を上げながら逃げてゆく、ホームにはそれを見送る連中がぽつぽ
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