旅立ち、と未熟が吹かしたがる/ホロウ・シカエルボク
 
のだ
癇癪のような夕立が路面を濡らした時間にはアーケイドの中に居た、なにを見るつもりもなかったのにどうして
雨の音を聞きながら濡れずにいたら濡れることが怖くなり、悲しいことなど知らなかったみたいな笑顔の老婆が腰をかけた一番近くの洋品店の店先のビニール傘を買って差した
雨音と足音がリンクする帰り道を、いつしか何も考えずに歩いていた、アナログのメトロノームの前で見た白昼夢のような時間、腰をかけたままの時間を、笑顔でずっと見つめている老婆、老いたいのか、老いて、幾つかのことを諦めたいのか
それが成就だとは俺には思えなかった、傘を折るべきか、折って濡れるべきか、だけどやはり折ることも出来な
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