どうして、また/ホロウ・シカエルボク
 
りと覚めながら俺は思った、あのときこのビルの内側には、非常灯ひとつ灯されてはいなかったのだ…俺は建物に近づいた、噂話だが、もうこのビルは取り壊しが決まっていて、機械警備も外されていると聞いた…持主が手放した、らしい、俺は通用口に回ってみた、ノブを回さずとも、鍵がかかっていないことは判った、それはほんの僅か、暗闇を覗かせながら開いていた、俺はゆっくりと滑りこみ―ドアを閉じた、少しの間息を殺した、非常ベルや、センサー、そんなものの気配を探してみた、でも判らなかった、窓の側により、こちらに向かってやってくる車の気配があるかどうか探した、しばらくの間そうしていた、気配はなかった、誰も、なにも、そこで動き出
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