海と蟻/夏嶋 真子
るはずもなく、足はもがれ、触覚は折れ
しだいに丸まって、乾涸びていく命の群れ。
羽をもつ蟻さえも、波から逃れ空へ飛び立とうとはしないのだ。
集団投身する蟻?
彼らのシステムに狂いが生じている。
命が命を放棄するように命じているのか?
そこに考えがおよんだ瞬間、
黒い紋様は幾重にも絡みつき私の心臓をギチギチと占めつけた。
素足の指先から這い上がってきた亡骸はカラカラと
乾いた音をたて転がりながら脳髄で反響するから、肩が震えだす。
組織 歯車 狂走 曲線 そして死。
怖ろしい、怖ろしいのだ。
彼らの行動に何か理由を与えてくれないか。
私は、彼ら
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