海と蟻/夏嶋 真子
 



何故?


浅瀬には、ミジンコほどの大きさほどしかない、
まだ体が透き通ったエビの幼生がいる。
蟻は、打ち上げられた彼らを狙って波打ち際で危険を冒しているのか?
いや違う。

むしろ捕食者は幼生たちの方だった。
水中で体長2ミリに及ばない幼生が、溺れた蟻を捕らえ喰らっている。 
それはさながら蟋蟀(こおろぎ)に群がる蟻のようで、
小さな白の強者と、大きな黒のかつての強者、
反転されたネガが波の隙間に散らばっていく。


だが、それも黒い葬列の物語の一部でしかない。


夥しい数の蟻が、次々と波にのまれ、無意味に打ち上げられる。
波の力に抗えるは
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