モンキーズが好きだった/竜門勇気
ーにふさわしい日じゃない
あいつは サイダーの缶を握りつぶす
ステッピンストーンが遠くで聞こえた気がした
おれはもう ビートルズを聞かないことで何かを得ようとは思えなかった
あいつは あの店長に聞こえるくらいでっかいゲップをしてニヤニヤしていた
おれはもう 出来のいい紛い物のほうが気持ちいいことを知っていた
あいつは 時々何もかもを知っていた
あいつは
おれの肩を叩いて
「かっかすんなよ、そんなことだれもきにしちゃいねえよ」
そういって走り出して消えてしまう
誰かよりおれは
いつでもおれはどこかの誰かより苦しいんだ
でもその誰か以外よりは苦しくはない
人を卑下するの
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