地蔵菩薩/within
 
気を使わないで構わない席に座り、コーヒーを飲みつつ玉を弾いた。しかし紙コップの中のコーヒーがなくなった頃、万札が一枚消えた。財布の中が空になるまで、それほど時間はかからなかった。全く当たらなかった。これ以上注ぎ込むのは危ない気がし、やはりあの寺に参らなければ勝てないのだと店を出、逃げるようにバイクを走らせた。
 翌日、この程度の手間で稼げるのだから楽なものだと、寺の石段を上り、境内を見回した。しかし僧の姿がどこにも見当たらなかった。背骨を抜かれる思いだった。捨て置かれた子供のような不安に襲われた。それでも、仕方ない、参るだけでもと思い直し、賽銭を投げ入れ、手を合わせた。
「もうどこの店に行って
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