六月の、/ことこ
 
後ろ髪を引かれる
どうして
妹のように美しい髪でなかったのだろう
暮れていく陽の
もう少しだけ、を残した
闇が束ねる
手つきはやさしくて
頭をかしげる速度で
すべて委ねてしまいたくなる


ぽかりと浮かぶ満月は
ひるまのうちに含んだひかりを吐き出し
閉じられた夜の反射率を支える
行きかう人びとの顔は見えない
この町でさえも
はねかえる声はこだまして
まばゆい波紋を描き
その縁を
犬の遠吠えが沿ってゆく
秒針のような正しさなど、必要とされない
湿った鼻が
残り香を丁寧にかぎ分ける


ひたひたに注いだソーダ水の
水面へ昇るいきおいで
生まれては消
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