「希望の丘」/プル式
 
たが
決して、それは美しくは無く
目の前の湖畔の様に誰かの心を打つ事は無かった
何かを感じたとするなら
それはただ漠然とした恐怖感だった
町の人はそんな絵を忌み、それを描く青年を嫌った
そうしていつしか人は湖に近寄らなくなり
次第に青年の事を忘れていった
蝋燭が消える様に静かに忘れていった

青年は町に出なくなった
町で買い物をすることも無くなり
生活の全てを森で過ごす様になった
食べ物が無くなれば木の実を食べ
絵の具が無くなると草花を詰んだ
紙が無くなると木の皮を削り
そこに、煮出した草花の汁で絵を描いた
青年の絵にはもう、鮮やかな色彩など無かった
しかし絵は
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