「希望の丘」/プル式
絵は、まるで命を得た様に鮮やかに
恐ろしい何かを吐き出していた
腐り始めた林檎の様に薄黒く
抗えない何かをちらつかせていた
青年と呼ぶには歳を重ね過ぎた男は
いつしか、森の木々を描き始めた
柔らかな雲や、暖かな日差しと
緑の波にに浮かぶ、小さな美しい町
それから小さな虫や、草や、木の芽を描いた
決して鮮やかでは無い色彩は
本当に色とりどりな
やさしく力強い命に溢れていた
湖から見上げた空は銀色に光り
街にはいつも、黒い煙りと濁った空気が溢れていた
夜には明るく、赤や黄色のネオンが光り
時折、怪しげな舟が森に近づいては引き返して行った
しかし男のカンバスにはい
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