信じることを書ききっている八木重吉のオリジナリティ/イダヅカマコト
 

こどもが せきをする
このせきを癒そうとおもうだけになる
じぶんの顔が
巨(おお)きな顔になったような気がして
こどもの上に掩(おお)いかぶさろうとする}

こどもの病を心配する親の顔が「巨きくなる」という様態、
そしてその顔を直接「掩いかぶ」せようという行動。
この両方を書ききって、はじめてこの詩は詩としての緊張感を保っています。

一つ一つの変化に一つ一つの結果をきちんと持たせる作業を、八木重吉はきちんと行っています。

変化と行動の対応性を整理と言っていいのなら、彼の詩は非常に整理されてクリアな光景を生み出します。

他にも、『花と空と祈り』という彼の遺稿集の
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