サイエンスフィクション・オールライト/竜門勇気
 
ある。どこかでふわふわ空を漂ってるようなもんだ。俺が「ここいらででかい顔をして歩きたいと俺は思ってる。でかい顔が出来るようになったら金を払ってやる。」と言うとビールは出てきた。
火星の極の氷を使ったビールだそうだ。
「あんたは支払いを欲しがってる。なら、次にあんたがすべきことは一つだな、なあブラザー?」
バーテンがニヤニヤしながらバーカウンターの奥の扉を指差した。
その指を銀の魚が横切った。群がるように魚たちがあらわれ、バーテンが見る見るうちに霧の向こうに消え去る。俺はかまわずカウンターを飛び越え真鍮のドアノブをねじりユーズドを訪ねた。

空っぽの部屋に深紅のビロード造りの椅子があった
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