サイエンスフィクション・オールライト/竜門勇気
 
った。その上には空白とぼやけた肉片のモザイクが鎮座していやがり、それは自らをユーズドの一人と名乗った。
その間も、わらわらと部屋の隅から湧き出る銀の魚に食い散らかされながら、ユーズドは言った。
「私に会いに来るには相当の覚悟があって・・・」
ユーズドの言葉さえ銀の魚は栄養にするようだ。徐々にユーズドの声は掠れ、途切れ、切れ切れになる。

「対価を・・・忠誠を・・・」
ユーズドの最後の言葉はこうだ。
「お前はこの物語の主人公だ。最後まで見届けよ。見届けさえすればそれでよい・・・」

今までユーズドを食いちぎっていた魚たちが俺に襲い掛かった。足が食われ手が食われ、
右目だけを残して去っていった。警官の唾液の臭いが食いちぎられたはずの鼻をつき、カビと紙魚の臭いに覆われた俺は目次へと吹き飛んで行った。

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