夢しゃしん/恋月 ぴの
付き合ってよ
多摩川の上流では天気予報通り雨が降りだしているのか
ひと夏の宴
その主役は私たちとばかりに蠢く生き物達の気配を剥き出しの二の腕に覚え
たまには顔を見せに来いってうるさいんだけど
姉とふたりでいると息苦しいだけでさ
いつもの彼女とは異なる一面を垣間見た気がした
ねえ撮ってあげようか
構図でも切り取るかのように指先でカメラの形を作り私へ向けてきた
とっておきの写真はこうやって心に焼き付けるんだ
私の好きな茨木のり子さんの作品に「私のカメラ」って詩があってさ
ラヴソングぽいところも気に入っているんだけどね
つい先ほどまでの気弱さみたいなも
[次のページ]
戻る 編 削 Point(20)