雨季/芳賀梨花子
 
く降るだろう。私が生まれた日のように。

今宵の空に
星が、月が、朧に輝く
どこに行けば
この所在のなさは救われるの

 海まで一気に走ろう。さよなら。汗と湿気で束になった髪でさえ、海から吹き上げる潮風になる。ぐんぐんと、普段使わない腿の筋肉が足から分離しそうになるぐらい、自転車のペダルをこいで、海へ。でも、私は海が嫌い。砂浜へ続く歩道橋の上で立ち止まる。国道、西へ東へと、ひっきりなしに走る車列。残されていく光を束ねては解きながら私は泣くだろう。セイレーン、あなたの歌声はまるで悲鳴のようだ。自転車のハンドルを強く握って、歩道橋のスロープ。防砂林の憎たらしい隙間、肌にまとわり付く砂、そ
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