例えば、永遠の夜があるとして/アオイリョーキ
 


彼が、父親を殺す時
それもきっと今夜だろう
この夜が明けないように願いながら
ナイフを突き刺す
この夜が明ければ、彼は自首するだろう
そう決めた筈だ
でも、永遠の夜のなかでは
彼の胸には苦しみと後悔と卑劣があふれるだけだ
あふれるだけあふれても、止むことはないのだ
永遠とは、そういうものだ

誰かがどこかで誰かを愛していても
それは永遠ではない
この夜の中でも永遠ではない
暗闇の中で泣いても、それは永遠ではない
感情は、永遠ではない
夜の中に埋もれていくだけ
埋もれても
誰かが手を伸ばしてくれることを祈っているのだ
時が止まればいいのに、なんて言った誰か
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