服部 剛第二詩集『Famila』/渡 ひろこ
 
んたたきながら/雨水で濡れた床に/
  少し足を滑らせ/開いたドアからホームへと/溝をひょいとまたいで/
  ぎこちなく降りていった/
  電車のドアが閉まった/
  手にした本を開いたまま/なにもできず/曇りガラスの向こうに消える/
  おじさんの後ろ姿を見送っていた/
  盲目なのは、僕だった。/
                          (「車内の隣人」より抜粋)

ふと出会った車内の光景でも、訝しげに思ってしまった自分を悔いているのである。
ここに“人の痛み”が共有できるという優れた感性が顕著に表れていると思う。
それを私自身、身を持って感じたのがこの作品で
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