Shaman's Love Song 2/佐々宝砂
私は知っていた
この部屋に積もる埃全てに意味があることを
皮膚をかきむしってもかきむしっても
私の皮膚がぽろぽろとこぼれるばかりで
わずかに血がにじむだけであることを
睡眠薬の眠りは決して
私を望む旅路には連れ出さないことを
ドアはいつも目の前にあり
ドアはいつも閉ざされて
私は知っていた
歌わねばならないということを
未生のこどもたちのために
月に昇ったまま帰らないこどもたちのために
歌わねばならないということを
銀色の梯子は声を伝えないので
できるかぎり声を張り上げなければならないということを
目を閉ざせば砂浜が広がる
どこまでゆけば海にたどりつく
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