Shaman's Love Song 2/佐々宝砂
 
私は知っていた
この部屋に積もる埃全てに意味があることを
皮膚をかきむしってもかきむしっても
私の皮膚がぽろぽろとこぼれるばかりで
わずかに血がにじむだけであることを
睡眠薬の眠りは決して
私を望む旅路には連れ出さないことを

ドアはいつも目の前にあり
ドアはいつも閉ざされて

私は知っていた
歌わねばならないということを
未生のこどもたちのために
月に昇ったまま帰らないこどもたちのために
歌わねばならないということを
銀色の梯子は声を伝えないので
できるかぎり声を張り上げなければならないということを

目を閉ざせば砂浜が広がる
どこまでゆけば海にたどりつく
[次のページ]
戻る   Point(3)