バレンシアの風/遊佐
 
った少年の姿を借りて
チョモランマの中腹辺りで色とりどりの鮮やかな旗の閃く中で
大海の教師の教えを学ぶ夢に酔う


或いは…
キングストンタウンの寂れた居酒屋で
金髪に褐色の肌、素足に原色のワンピースを着た情熱的なクォーターの娘と
マリファナの力を借りて
掌の上で地球を回す幻を見る


北西の風が
アオリイカを連れて帰って来る頃には

君は隣町の住人にならんと町を出て行くだろう

肩より少し長く伸びた黒髪は
山から海へと抜ける冷たい風を防いでくれるのだろうね
何10年前の物かも知れない位に程好くくたびれたジャケットを
被るようにだらしなく着た君が
鉛色の空と海を軽く蹴飛ばすように
ふん、と。
軽く
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