バレンシアの風/遊佐
南の風が
町を抜ける頃
温い昼下がりの射光と白い風景画の塗り籠めた下絵の上に停まった季節の翳り下で
欧風の白亜の建物の天辺に動かない風見鶏が見下ろす窓辺に揺れるカーテンのそよぎに抱かれて
セピアに彩られた午睡の端に微睡む君の横顔には
イスタンブールの寺院の壁とエーゲ海の家並みが重なり合って
シェスタとパエーリアを楽しむ民の血が注がれて行く
テーマはシルクロードであり
タイトルはヨーロッパ
スクリーンにはロマンチック街道が映る
チューリッヒやバチカンよりも
オタワやプラハよりもニースやカンヌ
ミラノやマドリードが良く似合う
僕はサンスクリットの書物を眺めながら
マテ茶と香の匂いを纏った
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