どこまでもどこへもどこでもなく/石川和広
 

緑の薄い、どういうんだろ
なんかヘラみたいに二〇センチくらい上にのびてるだけの
それが何本か

ずいぶん 前のことです

ひどく悲しいときにシミだらけのコンクリート塀の
横の細い道を歩いていてですね
その前にバスを降りました
大学にいってた頃ですか

バスに乗っている間に曇りから
どんどんむっとした感じの空気になってきて
大学のそばのバス停で降りたら
すごく爽やかな雨で、傘はもっていましたが
そういうのがあったって
何の支えにもならなかった

そういうとき雨つぶがぼこぼこのコンクリートの道に
いっぱい当たっててひどく田舎の学校で
河があり、むこうにはため
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