どこまでもどこへもどこでもなく/石川和広
ため池や田んぼや自分の大学があり
どうしてそんなに悲しかったのか
単位を落としたわけでも
そのとき授業があったわけでもないようです
だけど
大学に向って夕方わたしは歩いていました
歩けないような感じで
実際歩けていました
そのとき大学生だったか
もう卒業していたのか
ただ長い付き合いのある先生に
会いにいってたのかもしれない
その悲しみが何だったか
そのとき見えた草や
向こう側のクリーム色の家や
坂道がなんだったか
そこにいたわたしはなんだったか
どこまでもどこへもどこでもなく
そこでそのときなんです
けれども
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