静かに消えてゆく/木屋 亞万
 
なって、
荒れていた森を思い出させる
木々の家は荒れていた、言の葉は乾いていた
毎年同じ時期に同じような言葉が並ぶその森は、
風に揺れて爽やかな青い音を響かせていたのに
今年はあのマロニエも咲いていない
風の怒号は自分の感情をぶつけるためにしか響かない
それが誰かのしあわせを壊していることを知らない
その怒りは誰にも届くことなく自分に跳ね返ることを知らない
枯れた木をへし折っても、枯れそうな木を燃やしても
もう冷たい雨が荒地に降るのみ

いくつかの嵐が来たのだと小屋の老人が言っていた
管理する費用が尽きたのだと役人が言っていた
動物が大きいものから順に消えていったのだと
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