脳内麻薬/渡 ひろこ
あなたを壊れない頑丈な椅子だと信じていた
何の疑念もなく背もたれに身体を預けて
無邪気な童女のままでいられたのは
つい昨日のことのようだったのに
ある日突然
膝から降ろされ
剣山の上に立たされた
ああ…
痛くない、痛くない
そう言い聞かせながら、頭の中で少しずつ麻薬を溶かす
自分を騙すβエンドルフィン
去年わたしたちに降りかかった大きな礫に
圧し潰されずに済んだのは
受け入れる という正しい用法に従ったから
もう二度と使いたくないのに
今年もまた姿を変えたメフィストが
無表情に内なる処方箋を渡してくる
足を滑らせ、ブク
[次のページ]
戻る 編 削 Point(21)