はるか/木屋 亞万
いカーディガンの背中が揺れている、鼻を啜る、ぽたぽた涙が落ちてゆく、背中にかすかに浮き出る下着の線が見えるほど僕は彼女に近づいていた、彼女に話し掛けても反応はするが答えてはくれない、はるかが泣いているのは、花粉症かとか、山葵が効き過ぎたのかとか、映画に感動したからかとか、缶コーヒーが温か過ぎるからかとか、いろいろ聞いてみたけれど、どれも違うようだった、あれからもう三年になるのに、彼女は相変わらず泣き虫で、さめざめという擬音が似合う、彼女はふと顔を上げて、こちらを振り返らずに「もう4年目よ」と言った、そうか、もう春か、僕が君の背中すら丁寧に見なくなってかなり経つのだ、それは互いの世界からお互いが死ん
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