海について/一ノ瀬 要
わたしをのぞきこんで。
乱反射した、おとうさん、の顔、まぶしい。
ながく伸びたその影を、アーシュリー、きみが海へ、つれていくように
見えたよ。
まだ、子宮、という日を思い出せずにいた、その日。
赤毛色したしっぽ、ばかり追いかけているわたしに。
おとうさん、また、なにか、もういちど、つぶやいてください
ぐんしゅうの中ではない、あなた。背骨のこどうが、氷解、する
しずんでいく海の、気泡で弾く、チェロ
(波の音が言葉にならない、しくみ。)
わたしはそういうところを、えらんだ。
だから、かなしい。
おとうさんの、顔、見たよ。誕生石の雨。
しける、海の、そのて
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