荒地にて/徐 悠史郎
 
いだろうか。

 北川『荒地論』に次のような一節がある。


   しかし、綱領や規約や<一般報告(運動方針)>などで保証された、一つの
   政治的共同性が、 批評対象に対する共同の評価をつくり出すとき、そこに
   いかに文学的粉飾がまとわれようとも、政治的権威や時代主義的な心情が
   生み出されるのである。(思潮社版65頁)


 このくだりは詩人会議との論争において、北川が相手方の「綱領や規約」から抽出されてくる膠着した主張の内実について批判を加えている部分である。ここでの北川の立場がかならずしも<政治から自由な>立場なのではなく、党派の約束事として一般化された「綱
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