荒地にて/徐 悠史郎
 
際に、非常に有効な足がかりを「わたしたち」に与えてくれるように思われる。
 『荒地論』は1980年にひょんなことから発生した北川氏と詩人会議との論争を契機にして書かれた。ひょんなことというのは、「現代詩手帖」80年4月号での鮎川信夫と北川氏との対談に対する詩人会議の面々からの抗議や非難のことで(これは詩人会議の人たちからすれば逆に「ひょんなことというのは詩手帖の鮎川・北川対談での黒田三郎に対する否定的な言及のこと」ということになるのだが)、その詳しい内容については私がここで散漫に書くよりも、各々の原典をあたってみるほうが間違いがない。ともかく言えることは、このとき詩人会議との論争の中で浮き彫りに
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